第23回 BeSeTo演劇祭 新潟 The 23rd BeSeTo Theater Festival in Niigata 東京2020応援文化オリンピアード

【金森穣×逸見友哉 対談】新潟初の国際演劇祭を語る

2016/10/01

第23回BeSeTo(ベセト)演劇祭 新潟が10月1日より、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館で開催される。

北京(Beijing)、ソウル(Seoul)、東京(Tokyo)の頭文字をとって名付けられた本演劇祭は、1994年に、芸術を核とする相互理解を進めるとともに、世界文化への貢献を目指すものとして、3か国の芸術家たち、韓国の金義卿氏、中国の徐暁鍾氏、日本の鈴木忠志氏の決断によって創設された。以後、3か国の持ち回りで継続し、演劇祭という枠組みを超え、いまや東アジアを代表する国際文化交流事業のひとつとして重要な位置を担っている。

2015年より、BeSeTo演劇祭国際委員を、新潟を拠点として活動するNoismの芸術監督であり、演出振付家でもある金森穣が務めることとなり、23回目となる今回は、鳥取県、富山県南砺市利賀村とともに、初の新潟市での国際演劇祭の開催となる。

開催に際し、BeSeTo演劇祭の魅力やみどころをお伝えすべく、新潟古町えんとつシアター舞台芸術監督兼支配人として、新潟の演劇の活動を支えて続けており、BeSeTo演劇祭の副実行委員長として奔走している逸見友哉と、金森穣との対談が実現した。

 

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—BeSeTo演劇祭 新潟の開催に至る経緯を教えてください。

 

金森:ヨーロッパで活動してきて、15年前に日本に戻ってきてから、様々な舞台芸術を観てきました。その中で大感銘を受けた先輩のひとりが、60年代から活躍されてきている鈴木忠志さんという方で、勝手に心の中で師匠と呼んでいて、同時にかわいがっていただいてもいました。その鈴木さんが立ち上げられたこのBeSeTo演劇祭の国際委員に自分が任命されたんです。新潟市長はじめ、市役所のみなさんにそのことをお話したら、市でも東京オリンピックに向けて文化プログラムの開催を検討していたりもして、日本海側唯一の政令指定都市として、国際的な演劇祭の開催に向かって動き出した、という経緯があります。

 

—新潟で演劇を継続している逸見さんは、副実行委員長としてBeSeTo演劇祭をどう盛り上げていこうとお考えですか。

 

逸見:なかなか新潟で海外の文化とかに触れる機会がないし、地元の劇団とか演劇関係者に声がけしています。今、インターネットの普及などで世界との距離がすごく縮まっている中で、この機会をチャンスとして、この国際的な演劇祭を、新潟の演劇界全体の意識改革として持っていけるといいと思って、色々と宣伝してまわっています。新潟は、働きながら演劇をやっている人たちが多いのですが、是非、新潟の演劇人には観に来てもらいたい、と考えています。

 

金森:新潟の演劇人に限ったことでなく、舞踊でも、自分たちが作っている人は多いけれど、他の人の作品を観に行くことって、なかなか少ない。けれども、もっと人に届くような演技がしたいとか、もっと人が感動するような作品を生み出したいと思ったら、中国の演劇、韓国の舞踊家、日本人、など、他者がどういうふうに創作活動をしているかということに興味がわいて、そこから学べるものって必ずある。そこから自分が新しいスキルを手にする野心を持ったり、新しいアイデアに気づいたりすれば、創作がもっと楽しくなると思うんだけどね。

 

逸見:そうなんですよね。でも、なかなか伝わらないんですが、そういったところをこの機会に、金森さんから伺えるといいなと思っています。

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陝西人民藝術劇院[中国・陝西省]『かごの鳥の青春-當青春不再懷念蝴蝶的傷』

 

—今回、是非お聞きしたかったのですが、金森さんは演劇を観る際、どんなところに注目して観ていますか。

 

金森:絶対的にいえるのは、まずからだ、身体(しんたい)を観ていますね。演劇って言葉を用いるでしょ。だからどうしてもその意味性とかに引っ張られがちなんだけど、演劇の人にしてみるとちょっと心外なくらいかもしれないけど、自分は言葉にはあまり興味がない。書き言葉や詩みたいなものを語る場合は別だけど、特に口語の場合、その生の舞台で行われている出来事における言葉の重要度っていうのが一番下なの。なんというか状況を規定してるフレームみたいなもので、テロップみたいな感じ。補足的に聞いておけば物語はわかるから。それよりもその言葉をどういう身体が発しているかに興味がある。だから今回みたいに海外の作品で、字幕で観るほうが、意外と身体(からだ)に集中できていいときがある。身体と空間とで観ながら情報を追うというような感じ。

 

逸見:なるほど。余計な情報が入ってこなくて逆に観やすいというか…。

 

金森:そう。人間の器官で耳って閉じられないんだよね。

 

逸見:鼻も閉じられませんね(笑)

 

金森:そうだね(笑)。でも耳って本当にどんどん情報が入ってきてしまう。意識に関係なく。そのことに引っ張られちゃうっていうことがあって、だから演劇でも言葉に引っ張られずにからだを観るってなかなか集中力の要ることなんだけど、韓国語とか中国語とか、言葉を度外視して、字幕を追わずに、身体と出来事、空間で観ても何か感じることがあると思う。むしろ、そうでなければ演劇的にも成立してないからね。だってそれならリーディングでいいっていうことになるよね。

 

逸見:ラジオでもいいってなります。

 

金森:でも、そうじゃない、舞台でやることの必然性はあるわけだから。楽しめると思うし、観に来て欲しいですね。

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Noism0[日本・新潟]『愛と精霊の家』

 

―逸見さんが作品を創作していくときに、身体をどういうふうに考えていたり、観たりしていますか?

 

逸見:舞台に上げるときには、一つ一つの所作にも意味がないといけないと思っています。演劇の上演時間は長くても120分とかなので、そこに意味の無い所作があるとホントに時間のムダになってしまう。だから、そういうところは切捨てます。動作を観ているだけで、あの人は怒ってるんじゃないかとか伝わったりもするし、そういうところにはこだわって創るようにしていますね。

 

金森:逸見さんはどういうふうにNoismの舞台をご覧になっているんですか?

 

逸見:Noismの見方というより感想になってしまうんですが、毎回見終わった後にげっそりするというか、打ちひしがれるというか…(笑)。自分の努力の足りなさをすごく感じてしまって。ダンサーのストイックさがガンガンに伝わってきて、俺まだ全然何も努力してないな、今日からがんばらなくちゃな!って思います。

見方としてはやっぱり自分は演劇をやってるので、どうしてもストーリーを追ってしまうんですが、ダンサーの身体表現から、どういう感情や内容が伝わってくるかっていうところに集中して観たりしていますね。

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劇団旅行者[韓国・ソウル]『ジャングルブック』

 

―ちょっと話は変わりますが、中国とか韓国の文化は、私たちの文化のバックグラウンドと切っても切り離せない共通点がたくさんありますよね。別の場所で創られたからといって、簡単に自分たちとは関係のないもとのして切り離してしまうのはもったいないのではないかと思うのです。

 

金森:今この世の中を生きてる他国の芸術家が、演劇を用いて何を考えていて、どんな風にこの世界をみているのかっていうのを知れるチャンスだし、全く新しいものをみるわけだからね。

 

逸見:自分はやっぱり応援したいっていう気持ちがあって。もしかしたら自分がいつか中国や韓国で公演するかもしれない、お世話になるかもしれないっていうのもあるので、まずはこちらが精一杯応援してあげて、これからの交流に繋がっていくと絶対に楽しくなると思うので。

 

金森:そうだね。それに、今後も継続させていく過程で、よりローカルな演劇をやってる人たちに、ただ観るっていうこと以外の価値を波及していくことにつながっていけるといいな、と思っていて。だからまず今回は、観るっていうことに徹してもらう。すると次回また違った経験を提供できるかな、と。例えば、ワークショプを実施したりとか、交流会をやったりとか。

 

逸見:まずは、課外活動的にご飯を食べに行ったりするのもありかもしれませんね。(笑)

 

金森:そういった未来のことも視野にいれつつ、まずは、第一歩のこの機会を、Noismを観にきてくれている観客も、演劇を作っているみなさんも、ぜひ体験しに来てもらえるといいなと思っています。

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鳥の劇場[日本・鳥取]×劇団ティダ[韓国・江原道]『詩の教室』

 

―どうもありがとうございます。逸見さんも金森さんも、色々とお話したいこともあるかと思いますが、これをきっかけに、また別の機会を作っていただいて、新潟の舞台芸術の未来について深めていただけるといいですね。

 

対談の様子(一部抜粋)

(インタビュー:岡村滝尾[オカムラ&カンパニー])

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